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2008年5月28日 (水)

『iPS細胞ができた!』(集英社)

『iPS細胞ができた!』を読みました。

内容は、iPS細胞の生みの親、山中伸弥教授と、ウィルス学の権威、畑中正一京都大学名誉教授との対談。あまり専門的な難しい話はなくて、iPS細胞発見(発明?)の意義と今後の可能性や課題といった点に重点がおかれていて、素人でもおもしろく読めました。

iPS細胞というのは、体細胞である皮膚の細胞から得られた、いろんな細胞に分化する能力を持った細胞のことで、「induced pluripotent stem cell(人工多能性幹細胞)」の略だそうです。omnipotent(全能)っていう単語は見たことがあったけど、pluripotentって単語は初 めて見ました。iPS細胞は受精卵と違って個体にはならないらしいので、万能ではなく多能なんだそうです。

同じように色んな細胞に分化することのできる細胞でも、ES細胞は、個体になることのできる受精卵を壊して得られるので、その利用には倫理的な問題がつきまとうんだそうです。でも、iPS細胞は受精卵によらず体細胞から得られるので、倫理上の問題を生ずることなく、再生医療などに使える可能性があるんだとか。

いやー、素晴らしい! もう何十年かして僕たちが老人になる頃には、自分の体細胞からどんどんiPS細胞を作製して、心臓やら肝臓やら眼やら色んな器官に分化させて、弱った器官と取っ替えて、200才とか300才まで生きることができるかもしれないですね。神経細胞にも分化させることができるだろうから、脳の衰えも防ぐことができるだろうし、しわしわになった肌も若々しい肌に取り替えて、見かけも若返ることができるかも。この本の副題は『ひろがる人類の夢』ですが、ほんと、読んでると夢が広がってきます。

iPS細胞は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子のうち4つ(実は3つでいいそうです)を皮膚細胞に導入することで得られるそうで、そんな簡単にできるのかって、最初は山中教授も半信半疑だったそうです。大発見って、そういうコロンブスの卵的なところがあるんですねー。

iPS細胞作製のための遺伝子の導入にはレトロウィルスとかいうのを使うそうなのですが、ウィルスの遺伝子もiPS細胞に入ってしまうため、好ましくないそうです。で、4つの遺伝子から作られるタンパク質を加えることで、ウィルスを使った遺伝子導入をすることなくiPS細胞ができないかっていう試みもなされているそうです。そういえば、最近新聞で、4つの遺伝子のうちいくつかが化学物質で代用できたっていう記事を読んだ気がします。

対談を読んで一つ心配になったのは、アメリカがiPS細胞やES細胞、再生医療などにかける研究費の額は、日本の研究費とは比べものにならないらしいと いうことです。研究施設の差も歴然としているとか。対談の中で、山中教授が研究環境の日米における差について嘆かれるたびに、いったい日本の政府は何をし てるんだ!って歯がゆくなります。税金使うんだったら、道路よりも、こういう世界最先端の研究にお金を使って欲しいなあと思います。

山中教授は大阪生まれで神戸大学医学部卒業と、関西で過ごされている期間が長いせいか、対談のところどころで関西弁が現れるのも、親しみが感じられてよかったです。また、山中教授が、対談の中で何度となく、自分の周りの研究者や学生たちの仕事を評価し、感謝の意を表しているところも、とても好感がもてました。こういう人柄だから、大勢の人の協力を得てすごい成果を挙げることができたんだろうなって思いました。きっと山中教授は、この間読んだ『不機嫌な職場』に出てくるような沈滞した職場環境とは真逆の、意見交換が活発になされる、活気のある研究環境を構築されているんだろうなって思いました。

これからも山中教授グループから多くの画期的な研究成果が発表される気がします。んー、楽しみ!

 
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